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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES

きずな


《巻頭言》

《スリンの町で生かされて》

ヌヴェール愛徳修道会 片岡 玉江
  私は、2003年の5月から2006年の6月までのちょうど3年間を、タイの東北の貧しいスリン県に派遣され、県庁所在地の町スリンや、40km、60kmと離れた村の人々、子供達と共に生きる恵みをいただきました。それまでも80年代の終わりからたびたび、スリンの村や町のスラム、貧しい家庭の子どもたちを訪問していましたので、何か懐かしい、故郷に帰ったような安らぎを覚えました。
  修道会がタイ、ウボン教区へのミッションに出発したのは、当時京都教区長でいらした田中司教様の派遣によるものであり、この町をミッションの場と定めたのは、私たちを招いてくださった、ウボン教区(東北7県を司牧する)の司教様の提案によるものでした。
  修道会がここに小さな民家を借りて共同体を創立した当初は、本当に貧しい地域でした。雨が降れば、近所の家々の床下の黒く淀んだ泥水が膝下まで溢れ出て、ズボンやスカートの裾をたくし上げて通らなければ家にたどり着けないという所でした。
  特に仏教信仰が篤く、当初、市はキリスト教に対する警戒心を持ち、近所の人々も疑心暗鬼で姉妹たちを見ていたようです。司教様からは、「決してキリスト教を宣教しないように」とのご注意があり、姉妹たちは、キリストのみ名を口にすることなく、ただ、ボランティアとして人々の必要に応え、人々と共に生き、神様の愛を証していくことに努めました。
  私がスリンに派遣されたときは、創立から既に20年近く経っており、近所の貧しかった掘っ立て小屋のような家々は姿を消し、しっかりした家組みとなり、中には門を構えた家もありました。家の前の道は舗装され、20年前には珍しかった営業用自家用車が、サムロー(人を乗せる人力三輪車)を脇へ追いやって、スピードを出して通っていきます。近所の人々も、気楽に家に入ってきておしゃべりしたり、食べものを届けてくださったりと、同じ地域に住む者としてごく自然に、親しく姉妹たちを受け入れてくださっていました。
  しかし、このような生活環境の向上、安定の豊かさの産物として、貧富の差はますます広がっているようでした。特に人間関係において、最も貧しい地域やスラムに住む人々は差別され、そうでない人と普通に交わったり、口を利くことはほとんどありません。
  私たちは、そういう地域の子供たちとの関わりを生きていたので、共同体にはそういう子供たちが、時をかまわず遊びに来ていました。軒先にござを敷き、絵を描いたり、宿題をしたり、小さな弟妹のお守りをしたり、走り回ったり、どんなものもすぐ遊び道具となり、私も子供たちと楽しく遊びました。初めのうちは、隣近所の人々がそれを嫌い、子どもを内に入れないように、子どもは盗みをするし、何でもさわって壊し、汚くするから、とたびたび忠告されました。それでも子供たちに、近所の方に挨拶することや道にごみを捨てないことを教えていくうちに、だんだん子供たちは胸を張って通りを歩くようになりました。近所の方たちも、子供たちのために色鉛筆や、おやつを持ってきてくださったり、時には自分の家に子供を連れて行くようにもなりました。
  この子供たちの親も、初めのうちは決して私たちに挨拶をしませんでした。私が家の前を通る親たちにワーイ(合掌して挨拶する)をすると、チラと見て無表情で通り過ぎるだけでした。私は初めワーイが目上の人に対する尊敬の挨拶だということを知らなかったのです。でもそれを続けているうちに、親の方も丁寧に立ち止まって笑顔でワーイを返してくれるようになりました。親たちのほとんどは廃品回収か、サムロー、皿洗いか掃除、洗濯といった日銭稼ぎの仕事をしています。そうこうしているうちに、この親たちも、共同体の入り口に一歩二歩と足を進めるようになり、相談や子供の悩みなど話しに来るようになりました。
  私は体験を通して、人を人として尊敬し、愛する心の大切さを学びました。どんなに生活環境が向上しても、それが人を真の人としての幸せに導くのではなく、人の幸せは、自分が一人の人格として大切にされること、他の人と分け隔てなく、互いに尊敬と愛をもって交わり、互いの信頼のうちに助け合って生きていけること、そこに平凡なしかし恒常的な幸せがあるように思いました。
 私は、今も毎年スリンの町を訪問します。駅を降りると懐かしい町並み、懐かしい人々、子供の笑顔、そして、「サワディーカ(今日は)」「サバーィディールカ(お元気?)」と声をかけ合って、私はまた幸せな気分に浸るのです。
  


『第31回運営委員会議事録』

日 時:2008年12月9日(火) 18:00〜19:00
場 所:四谷SJハウス会議室
議 事
T.きずな105号について
  編集者の諏訪委員(欠席)からの次のような伝言があり。「ザ・メッセージ」に掲載する海外からの短信が少なかったので、「宣教者からの便り」の短いものを「ザ・メッセージ」として組み入れた。カンボジアで活動されているJLMMの高橋真也さん報告会の内容は興味深いものだったが、紙面の都合で短い記事となってしまった。

U.きずな106号について
  巻頭言は委員のSr.片岡にお願いすることになった。原稿締め切りは2月10日となる。

V.援助申請の審議
  審議を始める前に事務局より、ブラジルの 箕浦まさ(神言会付属カテキスタ会)さんからの申請は、金額が大きいことと、すでに4年前にこのプロジェクトへ支援を行っていることに鑑み、現在の予算残額では対応が難しいため、この申請の取り扱いについて委員会に諮った。審議の結果、今回は支援を見送らざるを得ないと判断し、次の4件について審議を行った。
@ ミクロネシアのSr. 赤岩恵子(援助マリア修道会)から家庭・病人訪問、聖体奉仕、婦人自立サポートや子供の要理指導などのプログラム実施に必要なジープの購入資金について支援の要請があった。要請額7,000ドルのうち4,000ドルの支援を決定した。
A エチオピアのSr. 小田美津江(マリアの宣教者フランシスコ修道会)から(a)アワサ教区ゴザ・カトリック教会建設、(b)小学校設備充実の2点について支援要請があった。(a)については極貧の生活状況の中で教会建設に向けて努力している現地の信徒の熱望に応えるために、要請額20万円の支援を決定。(b)については小学校備品と敷地用鉄製網垣根の2件の計4,554ドルの支援を決定。後の教職員用宿舎と雨天用多目的ホールについては、金額の面と支援の最優先的課題を勘案して、見送ることとした。
B カンボジアのJLMM高橋真也さんから申請があった(a)識字教育通学船維持費と(b)公立小学校用通学船維持費については活動継続に必要なものなので、合計6,700ドルの支援を決定。
C)カメルーンの末吉美津子(シャルトル聖パウロ修道女会)から(a)ピグミの寄宿生のための衣類と食費、および(b)職員の給与について支援の要請があった。審議の結果、(a)の76万円分の支援を決定。その内の20万円は川崎の篤志家から宣教地の子供たちの食べ物にという意向で寄付された金額を振り当てることにし、残りの56万円をネットの支援額として計上。なお、(b)の職員給与については、これまでの同様の申請に対する委員会の立場から、今回は見送ることにした。 以上の4件の支援決定額は、2,285,400円(1ドル=100円で換算)となり、今年度の支援額累計は7,635,200円となる。

W.その他
1)10月12日小金井教会と10月19日徳田教会のバザーに当会として参加させてもらった件について、牧野委員から次の通りの報告あり。
「小金井教会については波多野(真理子)、牧野、八幡委員が、徳田教会については波多野(光雄)、原、八幡委員が参加した。この2つのバザーにより46,650円の収益をあげることができた。ただ、利益の額の多寡ではなく、当会のPRになる点では貴重なチャンスであった。
また、150円のタオルを買うにも慎重に検討する人々を見ていて、不況の深刻さを実感した。問題点としては、仕入れた品物の利益幅が少ないこと、販売品と残品の送料が相当額になること、事務局の八幡委員の負担が多きすぎることなどがある。収入の面から言えば、献品を中心にしたいと思う。その意味で年間を通じて質の良い献品を収集する努力をしなければならない。」
また、波多野委員から「バザーに参加する場合は、運営委員の所属する教会に限った方が良いのでは。そうしないと参加の責任者が誰であるのか明確でなくなる。」との意見が出された。
2)次回の委員会は、3月10日(水)18時から四谷のSJハウスで行なう予定。なお、「きずな」106号の発送は3月5日を予定。
 


皆様のご支援をお待ちしております

1982年9月、世界各地へ派遣されている宣教者を日本から支援するためにこの会は設立されました。以来、困難な状況にあって現地の人々と共に生活し、喜びも悲しみも分かち合って活動する宣教者を物心両面から支援してきました。これからも皆様からのいっそうのご支援をお願いいたします。
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