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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES

宣教者の声

ペルーからのお便り(リマにて)

礼拝会 シスター 川俣 恭子
「リマ通信(その3)」

十主の平和

 日本では異常に暑い夏をお過ごしになり、またその後には、大きな台風が何回も日本列島を襲っているとか聞いております。地球の気象異変は本当に深刻ですネ。被害者の方々にお見舞申し上げます。
 私はお蔭様で今年の冬は風邪も引かず元気に過ごしておりました。3回目の冬でいくらか順応したのでしょうか?自身でも、寒さの初めから十分に気をつけていましたので。
 こちらでの私の生活は相変わらずの毎日です。午前中はお掃除、洗濯など家の中の用事で、午後は2時から6時まで通ってくるchicas(スペイン語でチカは娘の意味ですが、私たちは対象者の女性をprostitutaと呼ばないで、私達のchicaと呼んでいます)の相手をしています。現在、30人位がレギュラーで通ってきますが、その他にも5人位はいつも新しく入ったり出たりしています。なかなか続かないのです。いずれも、街角に立っている売春の女性たちです。30人のうち半数以上はまだ売春してお金を稼いでいます。子供や家族に食べさせるために仕方がないのです。でも、できるだけ早く止めたいと思ってこの訓練所に通ってくるのです。
 私は先生として教えているのではないので、この時間にはミシンをかけたりしながら、教室の様子に気を配っているのですが、何だかんだと雑用に呼ばれて、あっという間に時間が経ってしまいます。出席をとり、バス代の半額とおやつ代を手渡してあげるのも私の役目です。中には、こっそりとお金の援助を願ってくるchicaもいるので、事情を聞いてから、貸してあげたり、寄付してあげたりします。帰りには、教室とトイレの掃除を監督するのも私の仕事です。
 8月11日は聖クララの祝日で、シスター達とchicasが私の霊名の聖人を祝ってくれました。「パソコン」「ミシン」「美容」の各々のクラスのchicasが感謝の言葉を述べて下さいました。詩の朗読や歌も歌って下さいました。中でも、「美容」のクラスのchicasが2日分のおやつを犠牲して集めたお金で買ってきてくれたという花束を手渡して下さった時は、こんなことしなくてもいいのよと言いながら、とっても感激してしまい、涙が出てしまいました。愛されていることをひしひしと感じました。私たちからも大きなケーキと温かいチョコレートの飲み物を振舞って、しゃべったり踊ったりしながら、とっても楽しく過ごしました。
 この『聖マリアミカエラの家』(売春女性のための自立援助訓練所)も3年目になって、やっと少し軌道に乗ってきました。唯一の収入源の「Panaderia:Santa MariaMicaela」(パンとお菓子の店)も売り上げが伸びて、ご近所の皆さんからとっても美味しいと嬉しい評判を頂いています。パン職人Hectorと2人の売り子さんBarbaraとJuanaのお給料も払えるようになりました。(これまではCallaoの修道院からの援助で支払ってきたのです。)時々、大きな注文が入る時は家中総出で手伝います。
 また、今年になってから、いろいろな援助も頂くようになりました。スペインからペルー旅行に来た或る神父様はその小教区の信徒さん達に呼び掛けて下さって、バザーの売り上げ金を送って下さいました。そのお金で2月から「美容教室」のクラスを開くことができました。
 また、リマ大司教区のトマシ司教様は私たちのこの仕事をとっても喜んで下さって、ご自分が管轄している「カリタス・リマ」をとおして、古着や食料などをいつも贈って下さいます。先日も、山ほどの布地を「ミシン教室」のために下さいました。トマシ司教様はイタリア人のフランシスコ会士ですが、長く中国で宣教活動をされていたので、リマに住んでいる中国人たちの司牧者としてもすばらしい働きをなさっています。ほんとうにお優しい方で、私たちの家に来ると、すっかりくつろがれて、まるで私たちのお父さんのようです。このトマシ司教様が初めて私たちを訪問してくださった時、「何か必要なものがありますか」と言ってくださったので、院長がお言葉に甘えて、「多くのchicasが未婚の母で、赤ちゃんや幼児を持っているのですが、保育所は高くて払えないので、訓練所に来たくても来られないでいます」と申し上げたら、「それではここに保育室を作ってあげましょう」と言われて、1ヵ月後に工事が始まりました。緊急一時保護のために使っていた部屋を2階建てにして、1階に保育室、2階を寝室にする工事です。
 工事は約2ヶ月掛かって、やっと8月25日の聖マリアミカエラの帰天記念日に司教様のミサで祝別して頂くことができました。司教様の命名でCUNA SANTA GIANNAと名付けました。聖ジャンナは最近列聖されたイタリア人の女医さんです。4人目の赤ちゃんを産む時に、赤ちゃんの命を救うために自分の命を捧げました。この家の若い母親達にもそのご保護を頂けるようにとの司教様の願いがこめられています。トマシ司教様にはChicasも私たちもほんとうに感謝しています。
 また、この保育室のために、オランダのNGOが保母さんの1年分の給料とベビーベッドなどを寄付して下さることになっていますし、アメリカ大使館からも見学に来たので、何か援助があるだろうと期待しています。私達は貧しくて何にもできないのですが、神様の御旨ならば、きっとこの仕事を続けていくことができると思って一生懸命働いています。では、またお便りします。どうぞ皆様お元気で。
 感謝の祈りのうちに。
リマのトマシ司教様に祝別された新しい保育所
リマのトマシ司教様に祝別された新しい保育所
2004年10月26日