『ネパール……旅人たち』カトリック信徒宣教者会 荒川 治
僕が住んだ国はネパール。電気もガスもない標高2,400mの小さな村だ。森から薪を担いで降りた。寒い冬にはアカギレで手が腫れあがった。雨が降るとヒルにやられた。雹が降るとジャガイモの芽がつぶされた。
赤子が簡単に死んだ。カーストの違いで妊娠した女の子は別の人と結婚させられた。ブータンから命からがら逃げてきた人。チベットから追い出された人。出稼ぎの夫を待つ妻子と老夫婦。ゴルカ兵として異国のために命を張って来た人。深いしわと分厚い手。 自然のリズムの中で生かされる人々、結婚式、祭の踊り、喜びの収穫。 一日の終わりに、雲海が夕日に赤く染まった。 ネパールには旅行者が沢山来る。僕が出会った人は、文字通り旅人が多かった。心を旅している人たちだ。 有機農業を目指したい人、落語家になりたい人、国際協力したい人。結婚に、仕事に迷っている人、恋人を交通事故で失なった人、離婚した人、人間関係が何もかも嫌になった人、ただただ疲れた人、傷をもつ人、迷っている人。 どこかで出会う。不思議と出会うのだ。心を旅している人は、すぐに分かる。いつの間にか彼らは自分のストーリーを話し出す。そして、幾人かは、僕の住んでいる村まで来て、薪を担いだり、りんごを植え穴を掘ったりして帰っていった。 日本人は、とっても忙しい人が多い。スケジュールはいつも埋まっている。だから、立ち止まることなく突っ走る。Time is money。もっと効率よく、もっと合理的に、もっと豊かに、もっと楽しく、もっと、もっとと…。そして、ある日、ふと旅に出たくなる。 その旅は、目的のない旅。周りには、何もない。そこにいる人々は、旅人の身分も、今までやってきたことも、何も知らない。そして、出会う。行き倒れの人に、乞食に、病人に、貧しい人に…暖かい家族に、素朴な笑顔に、子供の笑い声に…偉大なヒマラヤに、焼いた死体の灰や人間の営み全てを飲みこむ川に…そして、自分自身に…大いなる何かに。 旅人は、また、それぞれの場所へ帰って行った。 ネパールのポカラで働く大木神父様(S.J)は、今、聖堂を建てようとしている。祭壇の後ろに、大いなるヒマラヤの見える大聖堂だ。旅人が、疲れた心を癒す場所。神と出会う場所。 いつの日か、僕もその聖堂で祈りたい。 現地青年(向って右)と共に 『第69回役員会報告』「会」の第69回役員会が'99年6月8日(火)午後6時から東京・四ッ谷の上智大学SJハウスで開かれ、次の案件等を審議、決定した。〔T〕1998年度・決算報告(別項) 〔V〕1999年度・予算審議(別項) 〔V〕「きずな」67号について @67号は、原稿が比較的早くに集まったので、ゆとりをもって編集出来た。 A割付けが終ったあと「アフリカ・チャドの報告会」の告知記事が入ったので、急遽編集後記と差し替えて掲載した。 『以上が報告された。』〔W〕「きすな」68号について@巻頭言は信徒宣教者会の帰国者にお願いする。 A原稿締切りは8月10日(火)、発行は9月1日(水)、発送は9月1日(水)の予定。 〔X〕援助審議(別項) 〔Y〕その他 @本誌55号に寄稿された片山久史神父が、6月5日帰天。「会」から弔電を送ったとの報告があった。 A従来は、単発の援助が中心であったが、長期にわたるもの(例:年間50万円くらいで長期間という援助)については、事前に計画案を提出してもらい、検討することになった。 B次回役員会は9月7E】(火)18時から、東京・四ッ谷・SJハウスで開催(予定) 『援助決定』(1999年6月8日決定分)
『会計報告(1998年度)』(単位・円)
『1998年度・活動報告』1.会議 役員会年4回開催('98年6月15日、9月8日、12月15日、'99年3月16日)2.諸活動 1)広報活動…広報誌”きずな”を年4回発行(6月、9月、12月、3月)国内会員と海外で働く宣教者に送付し、相互の理解と交流を深めた。 2)援助活動…世界の各地で働く宣教者から要請された諸援助について実情や内容等を検討し、資料も吟味して、緊急性、必要性の高いものから援助を行った。 3)海外の宣教者と国内会員の相互理解や交流のため、クリスマスカードを送り、手紙の交換など行った。 (*援助地区、額などについての関連記事は別項) 3.評価(反省) ★「会」の創設から16年が経過し、この会の存在が人々に知られるようになってきていること。また、会の創設者梶川神父が帰天され、“きずな”誌に追悼集を編集したことで、さらに会のことや歩みを知ってもらう機会となった。 ★広報社“きずな”や援助活動によって、海外の宣教者と国内の会員との交流も一層広がって来ている。 ★会の活性化を図るため、3名の新役員を加え、より充実した活動ができるようになった。 『1999年度・活動計画』「きずな」誌の年4回発行、年4回の役員会における援助申請の検討など、1998年度に準じた活動を行なう。また、,98年度は講演会を開催できなかったが今年度は,帰国した海外宣教者の報告などの現地のナマの声を聞く機会を作る。 『1998年度・援助活動明細』「会」では,1998年度も各宣教地で働く方々のために、その地に応じた支援を行なって来ましたが、その明細は次のとおりです。
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