『切手の多さとインフレの大きさ』フランシスコ会 中谷功神父
「ブラジルの第一印象は?」「そうですね。とにかく広い。しかし、手紙を出すのにたくさん切手が必要で、何と封筒のスペースの狭いこと。」そんな冗談を、ある席上話したら、「それがブラジルの現実だよ。」という返事があった。すなわち、広い国土、豊かな資源、それにもかかわらず、天井知らずのインフレ。切手の数はその象徴である。政治的にも、社会的にも、経済的にも、混乱してどうしようよじない。しかし、そういう状況の中でも、多くの人々は毎日を楽しく愉快に過ごしているように見える。「明日の事を心配してもしょうがない。今日を楽しく生きよう」の人生観が、ここでは現実的である。短い期間に一部しか見ていないで言うのは危険だが、ブラジルの教会についての私の感想は、次の様である。解放の神学で名が知られた神学者レオナルド・ポフに二度会って、食事を共にする機会を得た。もの静かで、どちらかというと思索的、観想的なタイプの人で、あまり多くを語る人ではない。このブラジルの現実をどうお考えですか、という私の質問に、師は言葉少なくこう答えた、「私の国の現実をよく見ていって下さい。私の愛する同胞達の現実を見て下さい。」司教、司祭、修道者、信者の中には、ブラジル社会 の構造的欠陥からくる貧困とその原因に関して、ある人は鋭く、ある人は気長に取り組んでいる人が少なくない。 一方では、既成のカトリックに興味がなく、他の宗教と混合した宗教に入る人達。宗教に全く無関心な人達。そして、今盛んになり大きな力になっているのは、セクトと呼ばれる、特に北アメリカからのキリスト教の新興宗教である。ラテン文化、カトリシズムというブラジルのアイテンティティーが、多様化する中で大きく揺れ動いている時代という感じである。こういう中で、日本の教会からの宣教者たちがどんな風に働いているのか、少しでも触れられれば幸いと思った。限られた時間の中で、お会い出来たのはほんの一部の宣教者でしたが、皆、エネルギッシュに活躍しておられた。スラムの中や、町の貧しい人々のために尽くしている人々。孤児が多いので、孤児院があちこちにあって、そこでもよく働いてました。一方日系の一世の人々は、だんだん年を取ったせいか、日本文化にますます郷愁が強く、寂しさもあり、彼らは日本人以上に日本人と感じられた。その方々の為に働くのは、まさに日本人にしかできない日本人宣教者の大切な仕事であると思えます。 その後、ペルーにも短期間滞在する機会に恵まれ、ペルーのほんの少しを垣間見ましたが、ラテン・アメリカに共通の大きな問題を同様に感じました。また、ラテン・アメリカの貧困を助長する背景に、日本の豊かさが大きな陰の力となって関わっているのが、ハッキリ見えました。人頼家族と言ら私達の視点から、日本に住む私達が、深刻に受け止めなければならない大きな課題と思います。ブラジル及びペルーでお会い出来た宣教者の方々に、心からお礼を申し上げ、体に気を付けて活躍して下さるよう祈らずにいられません。 かつて、宣教者が行った過ちを、繰り返さない様にも付加させて貰います。今回、私の属する修道会の、宣教に関する国際会議の為にブラジルに行ったのですが、宣教者をお訪ねしてその働く姿に接し、お話を伺ったことが、一番大きな収穫であったと思っております。 『第28回役員会報告』第28回役員会が、一九八九年三月二十八日午後6時から中央協議会会議室で開かれた。平成元年になっての第一回の役員会で、次の案件を審議・決定した。@「きずな」26号について=海外、国内からの便りも多く、写真も動きの多い、現地の実状のわかるものがあり、充実した誌面になったと思うとの感想が多かった。とくに、おたより″の中学一年の長岡朋映さんの「おたより 〜マザーテレサのようになりたい〜」は、心を打つ文で、印象に残ったとの声が多かった。 A「きずな」27号について=巻頭言は、南米視察をされた中谷功神父に依頼。発行は6月1日の予定。原稿〆切は5月10日。今後も写真を多用してほしいとの要望、また、編集者より、その国の国情に配慮しつつ編集しているので、了承をとの発言があった。 B木更津教会の関根神父から=その教会のアフリカ友の会で、車椅子3台、古いシーツ、ストレッチャー、注射器(古いものでも可)を集めているので、聖母病院や、多くの教会にも働きかけて集めておくことを確認。 C「海外宣教を語る会」開催について=海外より帰国、もしくは一時帰国している宣教者たちから現俸報告を聞く会を開く。日時=五月二十日(土)午後2時〜4時(当初、五月十三日の予定を変更)場所=中央協会議室で。マスコミにも働きかける。 D最後に南米を視察訪問された、中谷功神父から現地実情の報告があった。 「リオ・デ・ジャネイロの市街の教会でも、毎主日司祭は来なく、信徒とシスターで言葉の祭儀と聖体拝領を行う。」(中谷功神父) 『援助決定』(一九八九・三・二八決定分)韓国へ→宣教車用ガソリン代二五〇、〇〇〇円(聖ドミニコ宣教修道女会大西元子)。ブラジルへ→(東京)日本語学校学費一六七、〇〇〇円(山本伊三男神父) インドネシアへ→89年度奨学金20名分六七四、〇〇〇円(聖母カテキスタ会浜谷真佐美)。日本→活動費、養成費の一部五〇〇、〇〇〇円(カトリック信徒宣教会)。ブラジルへ→折り本、聖歌集ほか(送料とも)一三九、〇〇〇円(マリアの宣教者フランシスコ修道会佐藤和)。チャドへ→医療機器ほか、五〇〇、〇〇〇円(ショファイユの幼きイエズス修道会脇山ミキ子)計=二、二三〇、〇〇〇円 |