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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES

きずな


《巻頭言》

《答えはイエズス様がしてくださる》

イエズス会 大木 章次郎
  ネパールのポカラ市で障害児訓練センターを開設して2年ほど経ったある日、私のもとへ「先般新聞紙上に掲載された貴官の宗教活動に関する投稿記事に関し、その実態を確認するため本職執務室まで早急に出頭せられたし」という出頭命令書が届けられました。ネパール国の憲法には「国民には各自の信奉する宗教を実践することが保障される。ただし何人も他の宗教に改宗しあるいは改宗させてはならない」と明記されています。しかし、バイブルクラスの最中、突然殴り込みをかけてきた警官隊によって聖書などは焼き捨てられ、その場にいた人々は逮捕され、裁判にかけられ、投獄されてしまったというできごとを日々耳にする時期のことでした。
  私たちのセンターにも、十字架や聖像を目にし、ミサに集まる信者たちを見たりして、聖書のお話しを聞きたい、キリスト教の勉強をしたいという人々が出てきていました。もちろんこれらの隣人を憲法を恐れて、追いかえすような宣教者であってよいわけはありません。神様に導かれてきたこの霊魂たちを真理の生き方へと静かに導くことは、当然の務めと考えていたときにこの「出頭命令」は舞い込んできたのでした。
  『宣教活動に関しての訊問』です。「はい」と答えれば投獄となり、「いいえ」と答えれば無罪放免となるでしょう。しかしそれは「嘘」であり、罪となります。「はい」と答えて死刑となるのであれば殉教者の冠も授けられるでしょうが、この国に死刑はありませんから、殉教者にもなれません。それなら服役の身となるよりは仕事のため布教活動のためと「嘘も方便」で刑をのがれる道を択ぶべきでしょうか。
  「出頭命令書」が届けられたとき私は、面倒なことになったなと思いました。しかし少し思案しているうちに、これはべつに戸惑うことではないと考えるようになりました。『あなたたちは、私と私の教えのことから、役人や権力者の前に引き出され、裁かれることがあるだろう。そのようなとき、何をどのように答えたらよいかなどと取り越し苦労をして思い悩むことはない。そのときに答えるべきことは、あなたたちのロを通して私が答えるのだ』とイエズスご自身がはっきり教えておられるのを思い出したからです。
  一晩ゆっくりとよく寝て、翌日まったく平静な心で役所に向かいました。担当の役人の部屋に入り役人に会釈してから、「答えはイエズス様がしてくださるのだ」と考えながら、先客が並んで座っているベンチの末席に腰を下ろしました。すると、ベンチの先の方に座っていた人々が私を見て口々に「ナマステファーダー」、「ナマステファーダー」と私に挨拶し始めたのです。「神父さん、おはよう」という意味です。これを見て役人が「あなたたち、この日本人の知り合いですか」と尋ねます。「はい。この方は知恵遅れの子供たちにいろんなことを教えているんです。はじめ何も出来ないし何もしない子だったのに今は何でもよろこんでやっているんですよ」。「この人は怪我をした人や火傷をした人なんかにとても丁寧に治療してあげています。病院の先生よりもずっと上手なんです」。「ボロを着ている人にセーターをあげていました」。「物乞いの人にお茶を沸かし、パンを買ってきて食べさせたり、雨漏りで困っている家にトタン板を買ってきて修理してあげたりしていました」。「この先生の成人教室で勉強して、今私は読み書きができます」。「私には入れ歯も作ってくれました」。
  「ほう、ほう」と言ってみんなの言うことを聞いていた役人は、切りもなく続く報告を制して「この人たちの話すことはみんなあなたがなさっていることですか」と私に訊ねました。「はい、だいたいそのような線で皆さんのお手伝いをさせていただいているつもりですが」と答えます。「はい、今よくわかりました。先生、これからもどうぞゆっくりお仕事をなさっていってください。もうお帰りになって結構です。ご苦労さまでした」。
  イエズス様は聖書に書かれたお約束を、この善意を持った役人の口を通して全うしてくださったのです。私を危機に陥らせないように前もって私の隣人たちをその部屋に準備しておいてくださいました。
  この出来事のとき、私自身み旨のままにお導きくださいと祈りました。けれど、ネパールでの私の32年間のたくさんの難関をいつも無事に潜り抜けてこられたことを思い出すたびに、本当にたくさんの方々が私たち宣教者のために祈ってくださっていること、そしてその祈りに支えられていることを実感しています。これらのたくさんのご保護・お導き・お恵みをいただけていることは、限りない神様の慈しみとともに、自分ひとりの祈りからではなく、「聖徒の交わり」「諸聖人の通功」の現れであるとかたく信じています。
  教会の活動、教会の宣教活動に三つのもの「ひと・おかね・いのり」が必要と言われています。いま海外宣教活動を取り上げて考えましょう。神様の栄光のためにとの純粋な意向から寛大に捧げられた経済的物質的援助が、ふさわしい福音的な実りをもたらすようにとの祈りの支えも必要です。
  そして特に、気候・風土・言語・食物・貧しさ・不衛生・疫病・寒暑・湿度・水道・電気・政情不安・裏切り・不信・恐怖・喧騒・無秩序・不潔・悪臭・腐敗そして国民性の違い等々の苛酷な環境のうちに置かれた海外宣教者の方々のことを思い起こしてください。宣教者の方々が日々忍んでおられる不便・苦痛に満ちた生活の中で、純粋な信仰心を持ち続け、忍耐強く誠実にそして深い信心に生きる愛の人として聖なる霊的慰めに力づけられ、神様からの恩寵が豊かに注がれながら、尊い使命を全うされるためにはどれほど皆様のお祈りを必要としておられることでしょうか。
  いままでの海外宣教者を支援する会へのサポートを心から感謝いたします。そして今後とも従前に優る信仰に基づいたご支援を、特に祈りのサポートをお続けくださいますようにとお願いいたします。すべては神様のより大きなみ栄えのために。
  

『第34回運営委員会議事録』

日 時:2009年9月12日(土) 15:00〜16:30
場 所:四谷SJハウス会議室
議 事
T.きずな108号について
  今号の議事録は、2008年度の報告をまとめて載せたので長くなった。宣教者の派遣先一 覧表はスペースの関係で次号に掲載することになった。
U.きずな109号について
 1)巻頭言は、長らくネパールで活動されていたイエズス会の大木章次郎神父にお願いすることになった。
 2)例年通りクリスマスメッセージを掲載する。
 3)原稿の締め切りは11月10日、発行日は12月1日、発送作業は12月3日。
V.援助申請の審議
 @シエラレオネ・ルンサのSr.根岸美智子(御聖体の宣教クララ修道会)から、例年と同じ自家発電機用のガスオイル購入費、1年分30万円と、緊急用の医療費10万円の申請があった。現地では発電の計画はあるものの実現はいつになるかわからず、自家発電のオイルは必需品であること、また、保険制度がないため、いざというときのための立て替える費用が必要であることから、40万円の援助を決定した。
 A カメルーンのミンドウル村でピグミ族を支援する活動をしているSr.末吉美津子(シャルトル聖パウロ修道女会)から、2010年1月〜12月の1年間、ピグミの寄宿生のために76万円の申請があった。寄宿生は20,000CFA(4,000円)を持参することになっているが、10,000CFA、あるいは6,000CFAなどでも受け付けている状態である。引き続き支援が必要であることから援助を決定した。
W.その他
 1)10月に予定されていた小金井教会の「ヨハネ祭バザー」は、新型インフルエンザの影響を考慮して残念ながら中止となった。
 2)10月25日に成城教会の「ウエルカムデー」にバザー出店することになった。
 3)今年の当会のクリスマスカードは、井上信一委員のご尽力で、パソコン印刷でカレンダー付母子像のカードにメッセージを入れ、600部印刷することになった。カード作成には東京カルメル会のご協力をいただいた。また、例年通り宣教者へのクリスマスカードを手分けして送ることになった。
 4)「宣教者名簿」を700部作成した。431名の宣教者が掲載されており(そのうち95名は南米の現地で召命を受けた日系の宣教者)、関係者から喜ばれている。これも井上信一委員のご尽力によるものである。
 5)「宣教者のお話を聞く会」の候補として、ミクロネシアのポナペのSr.赤岩恵子(援助マリア修道会)の名前があげられた。
 6)事務所の仕事:年末は12月25日までとし、年明けは1月6日から始める。
 7)次回の委員会は、12月12日(土)16:30から四谷のSJハウスで行なう予定。



皆様のご支援をお待ちしております

1982年9月、世界各地へ派遣されている宣教者を日本から支援するためにこの会は設立されました。以来、困難な状況にあって現地の人々と共に生活し、喜びも悲しみも分かち合って活動する宣教者を物心両面から支援してきました。これからも皆様からのいっそうのご支援をお願いいたします。
    会費:個人=1口/1か月 1,000円  法人・団体=1口/1か月 10,000円)
    ほかに賛助会員として不定期にご支援いただくこともできます。
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         日本カトリック海外宣教者を支援する会 会長 V.ローシャイタ
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          日本カトリック海外宣教者を支援する会
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