ベトナムで学んだこと(2021/12/1)

聖パウロ修道会 司祭 山 内 堅 治

 2016 年7月から 2019 年5月まで、私はベトナムでの召命活動・志願者の養成のために派遣されました。以前、イタリアで2年半、アイルランドで半年間生活したことがあるので、何となくその延長線上と、ちょうど還暦を迎えた第三の人生の挑戦のようなものでした。
私が住んでいたのはホーチミン市内でも空港に近いタンビン区です。驚いたことに、私が住んでいた所から歩いて 15 分くらいの距離圏に教会が7つもあり、どれも信徒数が 2,000 人を超える教会でした。共産圏なのに、この数字に圧倒されました。
ベトナムへ行って挑戦したのは、ベトナム語の勉強です。とても難しいことは聞いていましたが、教会訪問や毎日のコミュニケーションのためには、どうしても必要だと感じました。そのため、ホーチミン市内にある人文社会科学大学に2年くらい通いました。日本で言えば、外国語大学のようなものです。通いながら思ったのですが、ベトナム語を勉強する人たちは、日本人だと東京外語大学、神田外語大学、大阪外語大学の交換留学生が多く、ほとんど 20 歳代です。また半数は韓国人の学生で、40 代、50 代になると社会人ですが、三分の一くらいは修道会・宣教会の方々でした。共産圏なので、みんな私服ですが、クチコミでだれが修道者かを教えてもらいました。具体的には、聖母被昇天会の司祭、クラレチアン会のブラザー、シスターでは聖心会、それ以外に日本に来ていない種々の修道会・宣教会。大司教館の修道会事務局の担当者に尋ねたら、「ホーチミン市内に未公認の修道会・宣教会も含めて約 300 の会がありますよ」と言っていました。種々の会がホーチミン市内に来ているので、大学でたくさんの修道者に会うのも納得がいきました。おかげで、ベトナム語だけでなく、いろいろな情報交換の場にもなりました。
また機会をみてベトナム各地を訪問しました。一番印象に残っているのは、旧正月の時です。1年目はゲアン省、2年目はナムディン省、3年目は再びゲアン省。ゲアン省はヴィン市内にあるミズ教会でお世話になりました。正月の2日目だったと思いますが、故郷に帰ってきた修道者・宣教者が一同に会し、教会で一緒にミサをささげ、その後、信徒会館で昼食を共にしました。志願者たちも含めて、30 名近くいたでしょうか。会としては、神言会、レデンプトール会、ベネディクト会、シャルトルの聖パウロ会、ロザリオの会、ベトナム固有の修道会など。みんな久しぶりに会うので、話がはずんでいました。その中に、アフリカで宣教している神言会の司祭が久しぶりに帰国して、自分の体験談を分かち合ったり、修道会の神学生が英語で堂々と会話している姿に、とてもたくましいなあと感じました。
今、たくさんの技能実習生や留学生が日本に来ています。ベトナム中部のゲアン省、ハーティン省、北部のナムディン省、ニンビン省、タイビン省の方々が多かったりしますが、比較的貧しい地域です。これらの地域を訪問すると、貧しい生活ですが、家庭を大事にしながら、お互いに助け合い、生き生きしています。日本が忘れてしまったものを生きている感じです。約3年間でしたが、ベトナムのいろいろな地域を訪問しながら、日本では感じられないものを体験し、学ばせていただきました。