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KIZUNA 日本カトリック海外宣教者を支援する会 JAPAN CATHOLIC ASSICIATION FOR AID TO OVERSEAS MISSIONARIES






『中南米への旅』

名古屋司教 相馬信夫
 カトリック日伯司牧協会の招待で、ブラジル・アパレシーダ聖母大巡礼へ参加のため、日本司教団の代表として、8月15日に成田を飛び立ち、25時間後にブラジル・サンパウロ空港に降り立った。
 私にとっては、中南米は初めての放である。
 神父様、シスター方、信徒の方々の暖かい出迎えを受け、直ちに日伯司牧協会のセンターに旅装を解く。……アパルシーダの大巡礼は8月26日なので、それまでの十日間、数カ所の日系人移住地を訪問することが出来た。まず、サンパウロ市内にある日本移民博物館では、80年前の笠戸丸による入植暗からの変遷と苦心の跡が実によく分るように展示されており、生きている博物館と云うことが出来よう。サンパウロ近い移住地からはじめ、ポルトアレグレ、クリチーバ、ロンドリーナ等の移住地を訪ねる。まず感じられることは日系人の農場は、概してよく整備され、よい収穫を上げているように見えた。しかし、経済状況は悪く、インフレと国際債務の増加のため、政府は昨年秋、銀行預金の凍結を行ない、預金が引き出せなく、…ある日系人が土地を売って銀行に預金した直後、預金が凍結され自殺したという悲しい詰もある。ある日系の農場では…里芋を3ヘクタール作って、米国に輸出しているので、現金収入があるので助かると言っていた。…ブラジルでは日本語の新聞が数種発行されている。驚いたことには、紙面の下半分は、日本のいろいろな会社の求人広告が沢山出ていた。南米各国では、日系人の1/3は家族で日本に出稼ぎに行っており、1/3は家族の一人か二人が日本に行っている……との話であった。
 8月26日のアパルシーダの大巡礼の日は、晴天に恵まれ、日系人のみで三千人、一般のブラジル人信徒は十万人が集まったとのことであった。世界第2の大きさを誇る大聖堂で…盛大なミサを捧げた。
 ミサ後、地下ホールで三千人の日本人が、思い思いの弁当を広げての昼食は、のり巻、いなりずし、煮しめなどなつかしいご馳走を囲んでの楽しい一時であった。午後は約2キロ離れた旧聖堂広場から、三千人が歌いながら、祈りながら巡礼行列を行ない、集まっているブラジル人の注目を集めた。大巡礼の翌日から約2週間、パラグアイ、アルゼンチン、ボリビア、ペルーの南米5カ国を回った。
 パラグアイ……でも経済事情は厳しく、多くの日系人は日本に出稼ぎに帰っているとのこと(であった)。アルゼンチンでは、聖母カテキスタ会の清水渓子さんが一人で、午前はチョコレート工場で働き、午後から老人や日系人のため、宣教活動をしておられるのには敬服した。ボリビアのサンタ・クルスでは、サレジオ会の倉橋神父様が、宣教に、司牧に慌しく、日本から来た二人の男女の青年が、信徒宣教者として協力していた。農村地帯でも、多くのシスター方が日系人、貧しい人々のため活躍されている。ペルーのリマは、南米の中で一番経済状態は切迫しており、日系のフジモリ大統領は、この危機を乗り切るため非常事態宣言を発令、徹底した緊縮政策を実行(しているが)、多くの工場は閉鎖、失業者は街にあふれ、北地区は、とくに貧しい労働者が多く、名ばかりの小屋に住み、子供のための食糧も買えず、各地域のキリスト教共同体(BBC)の婦人たちが、共同鍋・共同炊事場を開いて、炊出しを行なっていた。
 …9月11日、中米のエル・サルパドルに飛ぶ。…エル・サルパドルのダマス大司教様は…この国の人権問題のため、特別の人権委員会を作り、人権擁護に努力していることを話され、一年前ミサ中に射殺されたロメロ大司教様の墓に案内して下さった。翌日はイエズス会経営の中米大学のイエズス会修院を訪ね、昨年十一月、突然、軍の一隊が侵入し、学長以下六名のイエズス会司祭、信徒二人を射殺した現場を見せて頂いたが、その庭に美しく咲いていたバラは、まことに悲しい光景であった。翌日、シスター弘田の働いている、ニカラグアに向う。…今年の春の総選挙でサンジェニスタ政権が破れ、保守のウノ政権に代ったが……(人々は)貧しさに疲れ果て、働く人にはつらい暮しが続いているようである。ニカラグアの経済、人権事情がゆっくりでも好転すること、心からニカラグアのために祈り、この国を去って日本に向った。






『第34回役員会報告』

 「会」の第34回役員会が、去る九月二十一日(金)午後六時から中央協議会々議室で開かれ、次の案件を審議、決定した。
  • 「きずな」32号について今号の「新派遣宣教者の紹介」欄で、顔写真を間違えて掲載したことについて、編集者から陳謝があり、次号で訂正する旨、報告があった。
  • 「きずな」33号について巻頭言は、南米各国を歴訪、視察された相馬司教に依頼する。33号はクリスマス号なので、国内会員からの原稿も期待する。
  • 援助要請(別稿)
  • その他毎年実施している帰国宣教者の報告、現地事情などについての講演会を、各小教区に依頼、小教区での講演会開催について働きかけることについて話し合われた。 各教会のバザーへの出店を要請、また「きずな」の配布、現地の人たちの手造り製品などの販売を依頼する。
  • ボリビアにカトリック雑誌を送る件 ボリビアの宮崎カリタス修道女会・シスター山田初美より、カトリックの雑誌25冊を送ってほしいとの要請があり、「きずな」33号に、その要望を掲載し、日本で定期的に購読している人に呼びかけ、直接、シスター山田宛送ってよじらうよう協力を求めることになった。






『司教中南米とびある記』

マテをすすって憩う相馬司教(パラグアイ神言会本部食堂で)
マテをすすって憩う相馬司教(パラグアイ神言会本部食堂で)

シュンスタットの聖母マリア巡礼所小聖堂前で宣教者たちと(パラグアイ)
シュンスタットの聖母マリア巡礼所小聖堂前で宣教者たちと(パラグアイ)






『援助決定』

 (1990.9.21決定分)
地区 援助要請者 援助内容 金額 摘要
アルジェリア Sr中村節子(マリアの宣教者フランシスコ修道会) 編物綴の補修等 200,000円 1回
アルジェリア Sr中村節子(マリアの宣教者フランシスコ修道会) アラブ語タイプライター購入のため 200,000円 1回
モロッコ Sr朝倉信江(マリアの宣教者フランシスコ修道会) 宣教用車ガソリン代 300,000円 1回
モロッコ Sr朝倉信江(マリアの宣教者フランシスコ修道会) 教材費、学用品等購入のため 200,000円 1回
ブルキナ・ファソ Sr黒田小夜子(マリアの宣教者フランシスコ修道会) 栄養失調児センター運営人件費(1年分) 401,505円
ブルキナ・ファソ Sr黒田小夜子(マリアの宣教者フランシスコ修道会) 栄養失調児センター食費ほか(1年分) 321,230円
ペルー Sr又吉(ペルー・アウグスチヌス修道会) 子供センター改築(部内設備)資金の一部として 500,000円 1回